売上除外の取引は個人取引?それとも会社取引?
2013/06/20
会社の商品を役員が勝手に売って、その売上代金を役員個人の預金に入金していた場合、この売上は誰の所得になるのでしょう?
会社の決算書にはもちろん、この売上高は計上されていません。
一方、役員も確定申告をしていません。
このままですと、税務署は税金を取りっぱぐれてしまいます。
会社の商品を役員が勝手に売った所得は誰に帰属するかを明らかにした裁決があります。
会社が関与していない取引でも第三者から見れば会社の取引
会社側は次のように主張しました。
「役員が会社の商品を勝手に売って、その売上代金を役員個人の預金に入金していたということは、会社に売上代金が入金されていないのだから、役員個人の所得である」
一方、税務署側はこのように主張。
「この取引は会社の売上であり、売上除外にあたる」
裁判官の裁決は以下の通りでした。
この取引は
1. その販売先がいずれも会社の得意先であることが認められ、その売上代金の大部分は専務取締役の個人預金に入金されているが、同人はその取引に係る所得について確定申告をしていない
2. この取引の一部について会社の正規の納品書、請求書、領収書が使用されている
3. この取引の一部は、倉庫会社に保管されている会社の在庫商品を販売したものである
4. この取引が専務取締役の個人取引であることを裏付けるに足りる証拠資料がない
これらの事実を総合勘案すると、この取引は専務取締役個人に帰属するものではなく、会社に帰属するものと認定するのが相当である。
以上のことから当該取引は会社の売上除外にあたり、その分に対して法人税と追徴税を課す。(昭和56年7月24日裁決)
この裁決は「会社が関与していない取引であったとしても、第三者から見て会社の取引と思われる取引に関しては、会社の取引として税務上も取り扱われる」といったことが明らかになった判例です。
社内管理の不徹底が招いた事態
会社としては売上代金を受け取っていないので、この売上を計上して税金を払うことは納得できないかもしれません。
しかし、この事件は会社が社内管理を徹底していなかったことから生じたこと。社内管理の重要性をあらためて考えさせられる裁決です。
詳しいことは松岡公認会計士事務所におたずねください。