固定資産を廃棄しなくても損金計上して節税できる?
2014/07/17
本来は廃棄すべきにもかかわらず、そのまま倉庫や工場等に保管したままの固定資産はありませんか?
一定の条件を満たしている固定資産については、廃棄をせずに所有している場合でも、損金計上できる場合があります。
「有姿除却」で現存のまま除却処理
機械装置などの固定資産は、その耐用年数が過ぎ、消耗が進んで使えなくなると、通常ならば廃棄します。この場合、廃棄した固定資産を帳簿上から消滅することを「除却」といいます。
除却処理を行うことにより、その除却資産の帳簿価額は損金に計上されます。
固定資産の除却処理は、基本的には機械装置などを廃棄する必要があります。機械装置を廃棄せずそのままにしていれば、帳簿上固定資産として計上し続けなければいけません。
しかし、会社が保有する固定資産の中には、廃棄する費用が高額になるといったような理由で、今後使用する予定がないにもかかわらず、廃棄せずに倉庫や工場内に保管したままというケースがあります。こうした固定資産でも一定の条件を満たしていれば、廃棄を行わずに除却処理を行い、損金計上できる場合があります。これを「有姿除却」といいます。
有姿除却が認められる条件は、以下になります。
1.その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
2.特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより、将来使用される可能性がほとんどないことがその後の状況から見て明らかな固定資産
有姿除却を行う際の損金計上額は、その固定資産の帳簿価額全額を損金に計上できるわけではありません。
損金計上額=簿価-処分可能見込額
上記のように、有姿除却時における損金算入額は、通常の除却処理を行った場合と同じように、その固定資産の帳簿価額から処分可能見込額を控除した金額になります。
有姿除却の対象になる固定資産は、機械や金型等に限りません。工具や器具など、帳簿に計上している固定資産ならば、どんなものでも適用可能です。
帳簿価額が大きい固定資産だと、損金計上額も大きくなり、節税効果が大きく見込めます。
有姿除却を行う際の注意点
除却処理は本来、廃棄を行った固定資産に対して行います。
一方、有姿除却は現存したまま除却処理を行うので、対象となる固定資産が本当に有姿除却処理を行うことが妥当なのかを検討する必要があります。
有姿除却の対象となる固定資産がいつでも稼働が可能な状態では、有姿除却の適用が認められません。固定資産が再利用できないことを証明するため、主要部品だけを廃棄しておくという手法もあります。
また、金型については、その金型を使う商品が生産中止となっただけでは、有姿除却の適用は難しいでしょう。生産中止となったことを証明する資料(社内稟議等)を保存しておくなどして、誰の目から見てもその固定資産が将来の使用可能性がないと言い切れるようにしておく必要があるでしょう。
有姿除却は、会社から資金が流出することなく、決算日後でも損金として計上できます。
決算期末になって利益がたくさん出たときに、有姿除却できる固定資産がないか検討してみましょう。
詳しいことは当事務所におたずねください。